アドラー心理学とコーチング&ファシリテーション

アドラー心理学:部下との関係性をつくるモノの見方

アドラー心理学:部下との関係性をつくるモノの見方

アドラー心理学における「認知論」にはこんな考えがあります。
「人はみな主観の世界に生きている。」
 
かみ砕いて言えば、人はみな自分色のレンズのメガネを掛けていて、そのレンズを通して世の中を見ています。
残念ながらそこに客観の世界はありません。
全員、自分の「解釈」の世界に生きているのです。
 
そして、誰もが自分の見ている世界こそが正しい世界だと思っています。
自分の世界に間違いがあるなど微塵も思いません。
 
この誰もが掛けている自分色のメガネ。
多くの場合、本人がしてきた体験や経験からできています。
 
上司と部下の関係性が崩れる要因もここにあります。
お互い経験してきた内容も異なれば、量も異なります。
 
上司にとって自身の経験上「あたり前」のことも、部下にとっては初めて知る世界かもしれません。
また部下の世代にとって当然の価値観も、上司の世代にとっては理解不能な価値観かもしれません。
 
どちらが「正しい・正しくない」という話ではありません。
「お互い見ている世界、知っている世界が違うのだ」と認識することが必要です。
この認識ができていれば、より建設的な議論が可能になります。
 
そして、もう一点気をつけたいのは、自分の「解釈」を「事実」と混同しないことです。
 
皆さんは「事実」と「解釈」の区別はついているでしょうか。
例えば、
「富士山は日本一(標高が)高い山だ。」
これは否定のしようがない「事実」です。
では、「富士山は日本一、綺麗な山だ。」
これは、人によって意見が異なるであろう「解釈」ということになります。
 
この個人の「解釈」を、上司が職場であたかも「事実」のように伝えてしまう例が非常に多いのです。
すると異なる「解釈」を持っている部下は「いや、違いますよ!何を言ってるんですか!」と即否定したくなります。
部下によっては「嫌々ながらも従う」こともあるでしょうが、残念ながらそれでは「やらされ仕事」になってしまい、生産性向上は見込めません。
 
逆に「これはあくまで個人的な意見なんだけど…」のように、自分の解釈を「解釈」として伝えると、相手も「なるほど、部長はそう思うんですね。ただ私の考えでは…」と、即否定につながらず、お互い建設的な話し合いに発展しやすくなります。
 
「解釈」は思い込みにも発展しがちです。
上司のあなたがこの「事実」と「解釈」の区別を意識するだけで、組織の生産性は大きく変わっていきます。