アドラー心理学から見るゴーン氏への報道
少し前になりますがカルロス・ゴーン氏の再逮捕を受けて、氏の動画声明が公開されニュースとなりました。
ゴーン氏の問題については多くの海外メディアも注目し、日本の司法制度への言及もかなり顕著となりました。
特に下記サイト記事では「(日本の法制度は)ヨーロッパでは信じられない」といった声や、「外国人差別の一面を浮き彫りにした」といった海外メディアの意見が伝えられています。
https://www.huffingtonpost.jp/entry/ghosn-nissan-media_jp_5cac597be4b02e7a705cc3fc
これに対し、日本人の投稿者からは「有名な外国人だからか、むしろ優遇されている方だ」とか、「これが日本人だったら最初の保釈すら許されていないだろう」といった書き込みが見受けられました。
これらはアドラー心理学で言いえば「人はすべて主観の世界に生きている」という考えが当てはまります。
人は自分の見ている世界こそが「当たり前の世界」と思ってしまいがちです。
ヨーロッパの世界こそが「当たり前」と思っているヨーロッパの人にとっては、極東に位置する日本の制度が異様に見えても不思議ではありません。
逆に日本の制度こそが「当たり前」に思う日本人は、海外からの指摘に「むしろ特別扱いされている」と真逆の反応を示しています。
この現象は職場での上司と部下の関係でも起きています。
上司は自分の価値観こそが「当たり前の世界」と思っているので、それとは異なる部下の価値観に出くわすと、部下が不可解な存在に思えてならないのです。
そうなると、
「あいつは全くわかってない」とか、「本当にダメな奴だ」といったレッテル貼りに発展していきます。
一方、部下は部下で自分の世界こそが「当たり前」と思っているので、
「あの上司の言うことに納得がいかない」とか、「やはり、あの上司とは合わないんだ」となり、
場合によっては「ここで働いても苦痛だから転職しよう」という形に発展しがちです。
私がコーチングをする中で、相手が「そんなの当たり前じゃないですか!」とか「そりゃ、当然ですよ!」と言ってきた時は、「本当に当たり前ですか?」とか「私の中では全く当然ではありませんが…」などと返すようにしています。
多くの場合、その問いかけで相手は「あっ…」と、気づきを得ることが多いようです。
読者の皆さんも、部下をマネジメントする際は、
「自分は自分にとっての当たり前の世界に生きている。」
「部下は部下にとっての当たり前の世界に生きている。」
まずは、そんな認識を持つことから始めてほしいと思います。
各々が生きている世界の違いを認識するだけで、その対応は大きく変わってくるはずです。
最後にアドラーの言葉を紹介して終わりたいと思います。
「人は皆メガネを掛けている。ピンク色のレンズのメガネを掛けている人は、例え現実をねじ曲げてでも世の中はピンクだと言い張るのだ。」