アドラー心理学とコーチング&ファシリテーション

アドラー心理学:問題解決へのアプローチ

アドラー心理学:問題解決へのアプローチ

アドラー心理学の象徴的な理論に「目的論」があります。
この「目的論」のビジネスでの使い方について説明したいと思います。
 
こんな場面を想像してください。
部下が仕事で重大なミスを犯してしまいました。
そのミスを知った上司のあなたは真っ先にどんな言葉を掛けるでしょうか?
 
実際に多く聞かれた答えが、
「なんで、そんなミスをした?」
「どうして、そんなことが起こった?」
といったものです。
 
これはミスの原因を追究する「原因論」の考え方になります。
この「原因論」を適用すると、部下に次のことが起こりがちです。
ずばり「保身」です。
 
保身のために「言い訳」や「嘘」が生まれたり、「他責」といった現象が起こったりするのです。
上司のあなたがこれらのことを敏感に見抜ければ問題ありませんが、「嘘」などを見抜くのは簡単ではありませんし、嘘であることを立証するのにも手間がかかります。
 
ここで有効なのが「目的論」です。
「目的論」とは、未来の目的に向かって「いま何をするのか?」という点を追究していく考え方です。
 
先程のケースで例えると、
「ミスを挽回すること」を目的に置くならば、「どうすれば、そのミスを挽回できる?」
「今後ミスを防ぐこと」を目的に置くならば、「どうすれば、ミスを無くせる?」
こういったアプローチになります。
 
「ミスを挽回するために~~をします。」
「同じミスを2度としないように、今後は~~します。」
目的論で接すると、部下からは「言い訳」や「嘘」でなく、問題への「解決策」が生まれることの方が圧倒的に多くなります。
 
組織の生産性を考えた時、どちらのアプローチの方が有効でしょうか?
アドラーの言葉を借りれば、「過去の原因の追究は『解説』にはなるが、『解決』にはならない」ということです。
 
アプローチの仕方で相手の答えが変わるのであれば、部下の「言い訳」や「嘘」「他責」などを引き出しているのは、実は上司自身なのかもしれません。
組織の成果を上げていくために上司のマネジメント能力が必要とされるのは、こうした人との関わり方に拠る部分が大きいのです。