アドラー心理学とコーチング&ファシリテーション

【ブログ】ノーベル賞受賞会見から学ぶアドラー心理学

【ブログ】ノーベル賞受賞会見から学ぶアドラー心理学

以前、本庶佑(ほんじょ・たすく)京都大特別教授のノーベル医学・生理学賞の受賞が決定した時、記者会見においてアドラー心理学に通ずる部分があったのでここで紹介したいと思います。
(https://www.sankei.com/west/news/181001/wst1810010044-n2.html)
 
注目したいのは本庶教授の発言のこの部分です。
「『あんたのおかげだ』と患者さんにいわれることが、これ以上の幸せはない。自分の生きた存在として、これほどうれしいことはない」
 
アドラー心理学においては「人は貢献を感じると幸せを感じる」と考えます。
アドラーによれば、人生における幸福の要素として「貢献」が挙げられるのです。
本庶教授のこの発言はまさにアドラーの考えを体現しているのではないでしょうか。
 
さらに本庶教授は以下のようにも言っています。
「賞はそれぞれの団体が独自の価値基準で決めるもので、長いとか待ったとかは感じていない」
 
アドラー心理学では他者からの過度な承認欲求を否定します。
なぜなら他者からの承認ばかりを求めていると、常に他者の評価基準に合わせた生き方をすることになり、「自分の人生」を歩めなくなるからです。
 
賞の受賞を目的に活動することを「他者からの承認欲求」だとすれば、本庶教授の活動の目的はあくまで「貢献」に重きが置かれていることがわかります。
 
とはいえ、私個人としては承認欲求の一切を否定するつもりはありません。
現実として他者から承認されれば嬉しいでしょうし、それが日々のモチベーションになることも大いにあるでしょう。
 
ただ、その承認欲求から発生する行動が「他者への貢献」とリンクしない場合、やがて「虚しさ」を感じるときが来るかもしれません。
 
さて、これらのことをマネジメントに置き換えてみると、まず上司のあなたは部下たちから「おかげさまで…」と感謝される存在であるかどうか(部下に貢献しているかどうか)。
 
そして、普段からあなた自身が「おかげさまで…」の精神で部下と接しているかどうか(部下が「貢献」を感じているかどうか)、考えてみてほしいと思います。
 
「貢献」は部下へのモチベーションにもつながります。
成果に対して報酬などの賞で応えるマネジメントに終始していると、「賞がなければ動かない部下」ができあがります。
また、より良い賞を出す会社が現れたら、そちらへ転職する可能性もあります。
 
だとしたら、社会への「貢献」を通じて部下に仕事へのやりがいを感じてもらう。
会社や組織への「貢献」によって、組織での本人の存在意義や所属意識を感じてもらう。
 
その方が持続的なモチベーションへと発展していきやすくなります。
(因みに弊社のプログラムでは、部下に「貢献」を感じてもらうためのトレーニングを行います。)
 
ここで、アドラーの言葉を紹介して終わりたいと思います。
 
「よくできたね」と褒めるのではない。
「ありがとう、助かったよ」と感謝を伝えるのだ。
感謝される喜びを体験すれば、自ら進んで貢献を繰り返すだろう。
※小倉広 著『アルフレッド・アドラー 人生に革命が起きる100の言葉』(ダイヤモンド社)より