アドラー心理学とコーチング&ファシリテーション

【ブログ】外国人実習生制度への報道から学ぶアドラー心理学

【ブログ】外国人実習生制度への報道から学ぶアドラー心理学

今回は昨年の秋頃に話題になった外国人実習生制度を巡る報道を例に、アドラー心理学への示唆を述べたいと思います。
尚、本稿はあくまでアドラー心理学の学びを目的としたものであり、入管法改正や外国人実習生制度の是非を論じるものではありませんので予めご了承いただきたいと思います。
 
さて昨年の入管法改正に関連して度々耳にしたのが、外国人実習生の失踪人数が半年で4,000人に達したという報道です。
覚えているでしょうか?
 
このままのペースで推移すると、その数は過去最多を更新するとのことでした。
これについて。失踪人数は当然少ないに越したことはなく、現時点で4,000人超もいることは確かに憂慮すべきことでしょう。
ただ、その数を異なる視点で捉えると、それまでとは違う見方もできそうです。
 
現在日本で実習生として活動している外国人は全体で約26万人と言われています。
26万人中、半年間で失踪した人数が4,000人ということは割合で言えば約1.5%です。
これを年間の人数に単純計算すると、その倍の約8,000人となり、割合にして約3%となります。
 
失踪率が半年で約1.5%、年間約3%を多いと見るか少ないと見るか。
これは人によって解釈が分かれるところで、、専門家の意見も参考にする必要がありそうです。
ただ、失踪について「4,000人」ととるか「半年で実習生全体の1.5%、年間で3%」ととるかで、解釈に変化が起こる人がいてもおかしくありません。
 
また「失踪人数が過去最多」という表現も注意が必要です。
そもそも実習生の総数自体も過去最多を記録していたら、その意味も違ってくるでしょう。
ひょっとすると割合で言えば、例年とさほど変わっていないかもしれません。
(とはいえ、失踪数を減少させる努力は必要ですが。)
 
これ以外にもより詳細なデータを加味すると、さらに新しい解釈が生まれてくる可能性もあります。
ここで言いたいのは、我々が「多い」とか「少ない」といった判断をするとき、その背後にある客観的事実を十分に、そして適格に捉えているだろうか、ということです。
 
アドラーは「人間は主観の世界に生きている」と主張しました。
これは言い換えれば、人はそれぞれ自分の「解釈」の世界に生きているということです。
だからこそ、「解釈」の背後にある「事実」をきちんと捉えなければ、その「解釈」は単なる「都合の良い解釈」につながる可能性があります。
 
コーチングでの一コマを例に挙げますと、「会社でみんなが私を嫌っています」と相談された時、「具体的に誰と誰があなたを嫌ってますか?」とクライアントに聞くと、100人以上いる会社の中で具体的に名前が挙がるのは3~4人だけということがあります。
自分を嫌っている人は確かにいるかもしれないが、少なくとも「みんな」ではないわけです。
 
また、マネジメントでの場面を例に挙げると、部下が「お客様の多くがクレームを言ってますよ!」と言う時、「担当顧客200名のうち、具体的に何名からクレームをいただいたの?」と尋ねると、「今日アポで会ったお客様3人からです」ということもありました。
 
もちろん前者の「50人中3~4人が嫌っている」や、後者の「顧客200人中3人からクレームがあった」を、どう解釈するかは本人や会社の判断になります。
 
しかし、少なくとも解釈の背後にある事実を適格に把握することで、問題の見方や解決の打ち手は変わってくるのではないでしょうか。
 
アドラー心理学では個人の主観による思い込みを総称して「ベーシック・ミステイク」と言います。
リーダーのあなたに求められることは「ベーシック・ミステイク」に陥ることなく、意思決定の際にしっかりと客観的事実を押さえること。
また「ベーシック・ミステイク」に陥りそうな部下に対して、その背後にある客観的事実を確認して気づかせてあげることです。
 
必ず「事実」があって「解釈」が来ます。
よって「解釈」が果たして十分な「事実」に基づいてなされているのか。
リーダーのあなたはそこを意識してほしいと思います。